コミュニティイベントでoViceを利用する時に気をつけたいことと、その教訓
2つの大規模コミュニティイベント(JAWS DAYS 2021、JAWS DAYS 2022 )でoViceの設計に関わりました。それぞれのイベントにおいてチャレンジしたこと、気をつけていたこと、教訓を記録していきます。
JAWS DAYS 2021とは jawsdays2021.jaws-ug.jp
JAWS DAYS 2022とは jawsdays2022.jaws-ug.jp
oViceとは ovice.in
JAWS DAYS が oVice に求めたこと、チャレンジしたこと
oViceに求めたこと
JAWS DAYS 2021はオンラインイベント、JAWS DAYS 2022はオンライン・オフラインのハイブリッドイベントですが、oViceに求めたことは「オンライン参加者にセッション視聴以外のイベント体験をしてもらったり、参加者同士で交流してもらう」ためのスペースです。
これまでオンラインのコミュニティイベントは、セッション配信など企画側から参加者へ一方向のプログラムがメインでしたが、コミュニティイベントは参加者同士の情報交換もイベント参加のモチベーションになると考えています。これまでのオフラインイベントのような情報交換を行うことが難しく、なかなかうまく実現できていない状況でした。私が実行委員長をつとめたJAWS DAYS 2021では、この状況打破にチャレンジすることを目的に、オンラインに会場を作ることで、オフラインの時に会場の通路で参加者同士のコミュニケーションが行われていたような空間を再現することにチャレンジしました。
全国どこからでも参加できるオンラインのメリットを活かしながら、オンラインの課題を解決することで、JAWS DAYSの新しい形を目指して準備をしました。
つづいて、どのような準備をしてきたか記載していきます。
oVice参加者数の想定
それぞれのイベントで想定したoViceの参加者数は下記のとおりです。想定人数の差分が大きい理由は、イベント自体の参加者数、オンラインとハイブリッドイベントというイベント形式の違い、JAWS DAYS 2021の接続実績を元にした数値であることです。
oViceは1スペースあたりの最大同時接続数や推奨同時接続数が設定されています。oViceのサービス特性上、声が届く「範囲」があるため、狭いスペースに多くの人が接続された場合、最大同時接続数以内であっても混線してコミュニケーションが取れない状況(参加者が不快と感じる状況)になってしまう可能性があるため、推奨同時接続数も配慮が必要です。
用意したスペース数
それぞれのイベントで想定したoViceのスペース数は下記のとおりです。スペース数の差分もオンラインとハイブリッドイベントというイベント形式の違い、JAWS DAYS 2021の実績によるものです。
- JAWS DAYS 2021 想定 oVice参加者数
- 7スペース + 4つの予備スペース
- すべて 4800×2560px のサイズ
- JAWS DAYS 2022 想定 oVice参加者数
- 1スペース
- すべて 4800×2560px のサイズ
JAWS DAYS 2021では、最大同時接続数によりoViceへ参加したいが参加できないという人が出ないように、多くのスペースと予備スペースを用意していました。また、JAWS DAYS 2021では、英語セッションの英語音声配信をoVice上で行うというチャレンジも実施していました。(同時通訳は別途用意した配信サイトを通じて配信)
実施したプログラム
それぞれのイベントで、oViceを活用して実施したプログラムは下記のとおりです。
デザイン
oViceのスペースに来場された方にワクワクしてもらえるような仕組み作りの1つとして、デザインに相当なパワーをかけました。特にJAWS DAYS 2021は、スペース数も多くデザインだけで何十人日という工数をかけて用意しました。(ジョン兼マッツオ、Kohei Otaniに感謝です)
- JAWS DAYS 2021
- JAWS DAYS 2022
JAWS DAYS で oVice を利用するにあたり気をつけていたこと
その他、oViceを用意する際に意識したことが多くあります。その内容を紹介します。
来場してもらう動機付け
場所を用意しましたので、みなさん来てください、という案内では多くの方は参加するに至らないだろうと考え、「oViceに入ってみよう」と思ってもらえるような動機作りを行いました。AWSトリビアクイズ、キーワード集めゲームです。これらのゲームにクリアするとプレゼントをもらえる(抽選など)という特典を設けました。
操作が分からずに離脱してしまう人を防ぐ
避けたかったことの1つとして、oViceに来場したけど操作がわからなくて何をして良いのか分からず離脱してしまうことです。 参加者のほとんどが普段からoViceを使い慣れている方がであれば問題ありませんが、JAWS DAYS 2021/2022では「oViceを使い慣れている」という参加者背景は考えにくいため、初めてoViceを触る方を前提に準備を進めました。
- マニュアルを用意する
- JAWS DAYS 2021/2022専用のoVice操作マニュアルを用意
- ただし、全ての方がマニュアルを読み、理解してoViceに接続することは考えない。あくまでも困った時に読んでもらう程度を前提にする
- チュートリアルを用意する
- 接続した後、そのスペースを見ながら操作を覚えてもらうことがベストと考え、チュートリアル専用のスペースを用意
- 動線
- ヘルプスタッフを用意する
最大同時接続数による接続不可を発生させない
oViceにはプランごとの最大同時接続数(今回は1スペースあたり500名)があり、最大同時接続数を超えると新規接続を受け付けない状態になります。(最大同時接続数を下回るまでの間) 接続しようと思ってくれた方が、最大同時接続数による接続不可により接続できす、諦めてしまうことを避けたいと考えました。想定接続人数に対し、余裕のあるスペース数を用意するこどで、いずれかのスペースには接続できるような準備をしました。
混線しない広さ
oViceのサービス特性上、声が届く「範囲」があるため、狭いスペースに多くの人が接続された場合、最大同時接続数以内であっても混線してコミュニケーションが取れない状況(参加者が不快と感じる状況)になってしまう可能性があります。少人数のグループがスペース常に点在した場合に、混線して会話ができないということを防ぐため、最大サイズの「4800×2560px」を各スペースの基本サイズとしました。
コミュニケーションのきっかけとなるプログラムを用意する
スペースを用意するだけでは、コミュニケーションは発生しないと考え、Ask the Speaker、 Ask an Expert の2つのプログラムを用意しました。(JAWS DAYS 2022では、Ask the Speakerのみ) 専用のスペースとスピーカーの誘導や参加者の声かけをボランティアスタッフにお願いし、スピーカーの入れ替わりや対応をスムースにできる運用に気をつけました。
ワクワクしてもらう仕掛け
oViceに接続された参加者が、もっとこのスペースを探検してみたい、もっと違うスペースにも行ってみたいと思ってもらえるように、スペースのデザインに力を入れています。(デザインに関しては前述) また、街にテレビ中継が訪れた時のワクワク感を演出する狙いで、セッションでoViceの各スペースの様子を配信し、参加されている方が楽しみ、配信を見てくれた方がoViceに訪れてくれるような取り組みも行いました。
JAWS DAYS で oVice を利用することで得られた教訓
実際にoViceを利用してみて想定と異なることや、想定していなかったこともありました。そこから得られた教訓を紹介します。
オフライン会場の課題をオンラインで再現してしまった
オンラインの会場においてもオフラインの繋がりをもとにコミュニケーション形成が再現されます。当たり前ですが、オンラインだから他人同士がなんの前触れもなく、仲良くコミュニケーションを取れるということはあり得ません。オフライン、オンラインに関わらず、何かきっかけがありコミュニケーションが生まれます。
オンラインの会場でコミュニケーションが取られるきっかけの多くは「オフラインの繋がり」です。オフラインで元々知り合いだった人同士が輪を作り、コミュニケーションが行われます。オフライン会場の通路などで小規模な輪が複数できて、それぞれコミュニケーションが取られている状況、その光景がオンラインでも再現されました。
これまで会話することが出来ていなかった知り合い同士がオンライン会場で会話してもらえることはとても喜ばしいのですが、新しい参加者がその輪の中に加わることは、目に見えるきっかけが少ないオンライン会場ではハードルが高く、輪に積極的に加わるように周りの参加者に促してくれる人、新しい輪を作ることに協力してくれる人やスタッフなど、きっかけを作ることに協力してくれる人が必要と考えます。(偶然に期待してはいけない)
プログラムを用意するだけではなく「回す」人が必要
Ask the Speaker、Ask an Expertを開催し、専用のスペースとスピーカーの誘導や参加者の声かけをボランティアスタッフに協力いただき、スピーカーの入れ替わりや対応をスムースにできる運用を実現しました。しかし、人がまばらであったり、近づいても話しかけることなく離れていってしまう人が散見されました。理由は2つあると考えています。
1つ目は、Ask the Speaker、Ask an Expertのスピーカーやエキスパートが1人で質問者を待機する状況を作ってしまったことです。1人で飛び込み質問をするには勇気が必要だと思います。ちょっと質問してみようかなと考えた人も、マンツーマンになってしまう状況を避けて離れていってしまったのではないかと想像してます。帯同してサポートするスタッフを専任で用意するなどの準備ができていれば状況が変わったのではないかと反省しています。
2つ目は、Ask the Speaker、Ask the Speaker、Ask an Expertなどコミュニケーションを活発にすることで盛り上がりをみせるプログラムでは、司会進行のようなプログラムを「回す」人が必要だったという点です。絶え間なく質問が出続ける状況や、質問する方がそれぞれ順番を待って他の方に気を配りながら質問を行えるかというと、全てのケースでは当てはまりません。入れ替えだけではなく、プログラムの中身に関しても進行をスムースにする役割が必要だっと考えています。
ヘルプスタッフは最終手段
多くのヘルプスタッフに協力いただき、初心者向けチュートリアルスペース、コミュニケーションスペースにそれぞれ複数名のスタッフが滞在して、参加者をサポートいただきましたが、実際に参加者から問い合わせが発生することは極めて少なく、ヘルプスタッフの方には手持ち無沙汰な状態を作ってしまいました。中には積極的に参加者に声かけをしてくれたスタッフもいましたが、声をかけられると離れてしまう参加者が多く、最終的には積極的な声かけを控えたようです。おそらく、洋服屋の店員と来店客の心理と同じ状況が発生していたのだと想像しています。
ヘルプスタッフは最小人数で、いざとなった時に問題が発生したところに集合できるようにし、基本的にはスタッフに頼らない案内の仕組みを用意することが重要だと思います。(協力してくれたスタッフの方が不完全燃焼にならないようにするためにも)
滞在し続けてもらうプログラム、コンテンツ
「来場してゲームが終わり、その後に特に何もすることがないで退場してしまった」このようなアンケートがありました。oViceに来場する動機づけとして、AWSトリビアクイズ、キーワード探しゲームを用意しましたが、来場された方がそのまま滞在し続ける仕組み作りが不足していたのだと思います。
JAWS DAYS 2022では、パブリックビューイングを併設することにより、多くの方とセッションを同時に見る雰囲気を味わってもらうプログラムや、サテライト会場の様子をライブ配信するプログラムを用意し、来場者が継続して楽しめる工夫を取り入れました。
スペースは多く・広くしすぎない
JAWS DAYS 2021 では、「最大同時接続数による接続不可を発生させない」、「線しない広さ」を意識し、7スペース + 4つの予備スペース(すべて4800×2560px のサイズ)を用意しました。実際にはスペースの数が多く、来場された参加者がまばらになり、スペースによっては閑散としてるように見えてしまうところもありました。
JAWS DAYS 2022では、この反省を活かし、基本的に2スペースで運用、接続数が多くなった場合はスペースを追加するという対応に切り替えました。結果として賑わっているが、混線するような状況にはならない、とても良いバランスになっていたのではないかと思います。
チャットに頼らない
oViceは、メインのコミュニケーション手段は音声を前提に設計されているサービスです。チャット機能もありますが、音声のコミュニケーションを補助するための機能として捉えることをおすすめします。理由は、(特にoViceを初体験の参加者が)チャットに気づきにくいためです。
例えば、「イベントに関する案内をチャットで周知する」のではなく、「メガフォン機能を使って音声で周知し、あわせてチャットでも周知する」という形でオペレーションを組み立てておくことが大切です。
スペース間の移動は分かりやすく、シンプルに
複数のスペースを用意した場合、スペース間の移動はわかりやすく、シンプルに設計し、スペース間の移動方法が分からずに離脱してしまう参加者が発生しないようにする必要があります。 「〜〜スペースの移動はここをクリックから」と書いたオブジェクトを用意し、オブジェクトにスペースのURLをリンクし、オブジェクトをクリックすることで移動できるような仕組みを用意すると良いでしょう。
また、oViceには各スペースをビルのように階層化する機能もありますが、慣れていない人には気づいてもらえない(マニュアルを見て理解してもらわなければいけない)可能性があるため、オブジェクトを用意することと併用することがオススメです。
デザインは大事
デザインにこだわりましたが、パッとみてワクワクするようなデザインを用意することはとても重要で、力を入れる点として間違っていなかったと感じています。 oViceではあらかじめ用意されているテンプレートもありますが、イベントの特徴を感じてもらえるようなデザインを作成した方が良いでしょう。
まとめ
イベントでoViceを利用する際に気をつけたいことや、実際にチャレンジした結果の教訓をまとめてみました。 コミュニティを運営している方、コミュニティイベントでoViceの利用を考えている方、コミュニティイベントでコミュニケーションツールの利用を考えている方のお役に立てれば幸いです。